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第14回「地域創生論」 7月12日(木)、東京大学名誉教授で東京海洋大学学術研究院特任教授、日本学術会議会員の木村学氏を講師にお迎えし講義が行われました。

授業関係
 7月12日(木)、東京大学名誉教授で東京海洋大学学術研究院特任教授、日本学術会議会員の木村学氏を講師にお迎えし「地域創生論」第14回目の講義が行われました。テーマは「地球物理学者は、地域振興をこのように考える」。木村氏の専門は地質学、構造地質学。地質学とは、地面より下の地層・岩石を研究する学問分野で、構造地質学は地層や岩石の変形を研究する分野です。構造地質学は褶曲や断層からプレートテクトニクスまで、さまざまな規模の構造を扱うものです。

 木村氏はプレートテクトニクス研究の第一人者。プレートテクトニクスは、地震・火山活動・造山運動などの大地の大きな変動に関する理論です。地球表面は大小十数個のプレートよばれる岩盤がモザイク状の敷き詰められたような形でできていて、そのプレートと呼ばれる岩盤が固有の方向に動くため、その境界で地球表面の変動が起きる。プレートテクトニクスは各プレートの動きを量的に扱い、地震現象や山脈・海溝の成因などを全地球的規模で統一的に理解しようとするものです。ドイツのヴェーゲナーの大陸移動説などを発展させた理論で、1960年代後半から注目されるようになりました。

 日本では特に1995年の阪神淡路大震災以降、このプレートの動きを観測し分析するシステムの構築に大きく力を注いでいます。地震に関する科学は確実に進歩している。しかしまだ決して人々の生活の安心や安全を確保するのに十分ではありません。2011年の東日本大震災での経験がそれを物語っています。木村氏は2003年より、南海トラフで実施されている地震発生帯掘削計画において共同代表研究員、国際掘削マネジメントチーム共同代表研究員、2013~14年地球深部探査船「ちきゅう」の国際深海探査計画運用委員会議長を務めておられます。講義ではそれらで得られた地球に関する様々な知見を、素人でもわかるように、紹介してくださいました。

 講義の冒頭、木村氏はゴーギャンの「われわれはどこから来たのか。われわれは何ものか。われわれはどこへいくのか。」というタイトルの一枚の絵画を示し、その問いの中にあらゆる知性の根源があるではないかというお話をされました。面白いことに、木村氏によると私たちが立っているこの大地は人の髪の毛や爪が伸びる速度とほぼ同じ速度で動いているといいます。地球の誕生は今から46億年前。地質学的には数百万年の単位で現在我々の目の前にある山や海や大陸、さまざまな地形が地球自らの力で作り出され、そして未来もまた自らの力で変化をしていくと考えられます。それはまるで地球が一つの生命体であるかようです。ただその時間的スケールは我々の日常的な感覚とけた違いに壮大ですが。木村氏の講義は、科学の最先端と大きなロマンの両方を感じるお話でした。

 質疑の時間では、原子力エネルギーについて、地震予測の可能性、南海トラフ地震への対応等に関して意見交換が木村氏と受講者との間でなされました。

次回7月19日はいよいよ最終回。「『地域創生』の実現に向けてⅢ」というテーマでパネルディスカッションを行う予定です。