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新着情報

第3回「地域創生論」 『南部美人の挑戦~岩手から世界へ~』が行われました

授業関係
 4月27日は、二戸市にある株式会社 南部美人の五代目蔵元、久慈浩介氏による講義でした。同氏が社長を務める南部美人は、先々代から販路を広げ、ついに世界市場への進出を果たしています。過去最高となった日本酒の輸出は同氏らがパイオニアとなって切り開いたものです。今回は、マーケティングを含む、南部美人の「世界戦略」の考え方と同社の取組みについてお話をいただきました。
 久慈氏によれば、『人口減少に喘ぐ日本では国内消費は確実に減っていくが、世界に目を向ければ人口は増えており、「日本酒を飲んでみたいと思う人」は確実にいるはずである。世界で売っていくためには、日本酒を「知ってもらう」ことがまずは必要。「舌で味わってもらう」前にまず「頭で味わってもらう」という(文化的)戦略が必須であると考えた。その為に最初は日本酒、そして後年は南部美人の知名度・認知度向上のために、試飲会、セミナー、他業種とのコラボ企画(例えば、蔵オリジナルTシャツのユニクロによる製造販売)等々のあらゆる努力を行った』とのことでした。その数々の事例が紹介されました。
その他、生産物の認証制度の取得とまちづくり一体となった「プロジェクト」の紹介もありました。南部美人では、動物由来の食べ物を食べない、食べられない人向けに「ヴィーガン」認証を取得し、二戸市でまちおこしと町ぐるみでこの取組を行っていいます。日本酒は米と水だけからつくられるヴィーガン食品です。世界には6億人がヴィーガン+ベジタリアンといわれています。久慈社長はこの認証を「二戸市 フ―ド・ダイバーシティ宣言」(食の多様性の町)に発展展開させました。それは、差別化して市場価値化するというマーケティング活動の一環でもありますが、地域活性化(≒地域再生)や国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の目標、「誰も取り残さない社会」の実践でもあります。この事例は、マーケティング(ビジネス)、まちづくり(地域再生)、社会運動(変革)の三位一体的な取り組みという点で、「地域創生論」という本公開講座にとって相応しい、貴重で示唆に富む講義でした。
質疑応答では「小さな蔵が多い業界全体を底上げするにはどうしたらよいか」という問いに、「世界は“規模の大小”ではなく、“価値の大小”を見ている。世界を相手にして評価されなければ、狭い日本では生き残れない」(志を高く持たなければならない)という回答が大変印象的でした。講義の最後に、23歳で世界市場に出ることを決意した同氏から、「岩手のいいものをもっとたくさん見つけて欲しい。若い皆さんは失敗を怖れず、可能性を信じて進んで欲しい!」という力強いメッセージをいただきました。