第15回「地域創生論」 『地域創生の実現に向けて~第Ⅱ期地方創生政策の課題を探る~』と題してシンポジウムが開催されました
授業関係
最終回となる 7月18日日の授業は、岩手県政策企画部長の小野博氏、岩手日報社編集局報道部次長の稲垣大助氏をパネラーとしてお招きし、岡田秀二学長をコーディネーター役とするシンポジウム形式で行われました。
1. 話題提供及び報告:
(1)まず学長から、「政策の関与がないと社会は動かない。全講義において政策との関係が述べられている。この最終回は、政策実践者の岩手県、それを吟味評価する立場のマスコミ、それを第一線で取り組むお二人とのシンポジウムとした」、との解説で開始となりました。
(2)小野氏からは、県は「いわて県民計画 (2019~ 2028)」の第2期政策推進プランで4つの重点事項『 ① 「人口減少対策」の結婚、妊娠、出産、子育てへの支援(自然減対策)と若年層の県内就職、定住-移住の促進(社会減対策)。②GX(グリーントランスフォーメーション)を推進し、カーボンニュートラルと持続可能な新しい成長を目指す。③DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進し、デジタル社会における県民の暮らしの向上と産業振興を図る。④災害や新興感染症など様々なリスクに対応できる安全・安心な地域づくりを推進する。』に取り組んでいる(詳細は第8回講義 ここから)。今回は③のGX推進につき「水力発電を活用した取組」、「バイオ炭を利用する取組(カーボンクレジット)」、「木質バイオマスエネルギー利用」、「グリーン/ブルーボンド(海洋資源・生態系保護の資金調達とその活用)」について詳細な事例紹介がありました。
(3) 次に稲垣氏が、「地域創生の実現に向けて」と題してジヤーナリストの視点からみた政策、また地域創生への現状と課題につき岩手日報記事を示し話されました。
① 「地方創生は成し遂げられたのか」では、成果の実感は限定的でコロナ禍の地方回帰に打開策がある。東京一極集中には改善がなく自治体の苦しみは改善されていない。24年6月の政府報告書はその要因分析がないのは不十分。人口減少や地域の医療機関の減少に歯止めがかからず安心して子育てができる環境になく、政策の成果の実感は限定的。2020年度からはコロナ禍への打開策も合わせ地方創生臨時交付金があったが、その中には使途への疑問符がつくバラマキ的なものもあったと批評しました。
②「進む人口減少」では、岩手県は人口減少対策に重点をおき、21年度は「移住定住・関係人口拡大」、22年度は「出産・子育て支援」、23年度は「若者の地元志向の高まりを支援する「起業支援」等に注力してきた。22年の移住相談は過去最高となったが、地域一体としての発信力が課題である。
③「地域に人を呼び込む、市町村・企業も切磋琢磨」では、市町村・民間事例の紹介(西和賀町の若者向け住宅)、県内中小企業のDX推進、東京に本社置く企業との一括採用、北上の大規模アウトドア民間事業、企業版ふるさと納税(官民協働の施策推進)、キオクシア/トヨタ自動車東日本㈱岩手工場等のトピックス紹介がありました。
④「震災と地方創生、未来への希望、提言」では、大震災で課題は鮮明になった。コミュニティの維持が課題となっている。どう地域をつくっていくか、その過程、在り方は地方創生そのもの。県や市町村に「思い切った独自の政策をしては?」→身銭を切っても未来への投資になるはず、と現場記者目線から「岩手モデル」を官民総参加で目指そうと講義を結ばれました。
2.シンポジウム
下記の質問・コメント等がありパネラーの丁寧な回答と学長の解説等で活発な応答が行われました。
・今年4月に人口戦略会議が公表された「消滅可能性は県内は26市町村」とする報告に関する見解とその評価と対応ついて
・自治体による子ども誕生報奨金制度をどう評価するか?
・首都圏一極集中を国は是認しているのでは? もしそうなら、ある程度の集中を前提とした政策・施策の方が有効ではないか。関係人口策、二拠点居住策、分散納税等々
・一極集中の危険性とは何か?
・新規採用だけなではなく中途採用(Uターン者)の積極的受け入れ、就労支援策が有効と思われる。その対応策は?
・岩手の風潮、岩手は遅れている、都会がベター、という大人のアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)が若者に悪影響を与えているのではないか??
・若い人の本音を拾い上げる、若い人の共鳴する記事や報道の必要がある。
・県内の平均賃金、最低時間賃金等が低い。この改善策は?
最後に学長から、「地方創生の政策の重要性が強く感じられる内容でした。要点は地域の持続性の条件をきちんとつくることであり、具体的には、①人の再生産(ある程度の人口の確保)と②産業構造の進化と創造的転換、そして③エネルギーの再生可能エネルギーへの転換。この3つにより地域の強靭化をはかることが肝要。その時に私たちが豊かになったことで失った、またはかなぐり捨ててしまった“人間性”や“生き易さ”をもう一度しっかり再構築することが大事」との総括で、全15回の地域創生論は終了となりました。
今年度「地域創生論」の講師役をお引き受けいただきました皆様にあらためて御礼申し上げます。後期には公開授業「地域活性論」を予定(内容確定 ここから)しています。引き続き富士大学の地域貢献プログラムへのご理解とご協力をお願い申し上げます。
写真1)左から岡田学長、小野部長、稲垣次長 写真2 小野部長 話題提供 写真3 稲垣次長 話題提供
写真4 シンポジウム 質疑応答 写真5 シンポジウム 風景 写真6 シンポジウム 学長コメント
1. 話題提供及び報告:
(1)まず学長から、「政策の関与がないと社会は動かない。全講義において政策との関係が述べられている。この最終回は、政策実践者の岩手県、それを吟味評価する立場のマスコミ、それを第一線で取り組むお二人とのシンポジウムとした」、との解説で開始となりました。
(2)小野氏からは、県は「いわて県民計画 (2019~ 2028)」の第2期政策推進プランで4つの重点事項『 ① 「人口減少対策」の結婚、妊娠、出産、子育てへの支援(自然減対策)と若年層の県内就職、定住-移住の促進(社会減対策)。②GX(グリーントランスフォーメーション)を推進し、カーボンニュートラルと持続可能な新しい成長を目指す。③DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進し、デジタル社会における県民の暮らしの向上と産業振興を図る。④災害や新興感染症など様々なリスクに対応できる安全・安心な地域づくりを推進する。』に取り組んでいる(詳細は第8回講義 ここから)。今回は③のGX推進につき「水力発電を活用した取組」、「バイオ炭を利用する取組(カーボンクレジット)」、「木質バイオマスエネルギー利用」、「グリーン/ブルーボンド(海洋資源・生態系保護の資金調達とその活用)」について詳細な事例紹介がありました。
(3) 次に稲垣氏が、「地域創生の実現に向けて」と題してジヤーナリストの視点からみた政策、また地域創生への現状と課題につき岩手日報記事を示し話されました。
① 「地方創生は成し遂げられたのか」では、成果の実感は限定的でコロナ禍の地方回帰に打開策がある。東京一極集中には改善がなく自治体の苦しみは改善されていない。24年6月の政府報告書はその要因分析がないのは不十分。人口減少や地域の医療機関の減少に歯止めがかからず安心して子育てができる環境になく、政策の成果の実感は限定的。2020年度からはコロナ禍への打開策も合わせ地方創生臨時交付金があったが、その中には使途への疑問符がつくバラマキ的なものもあったと批評しました。
②「進む人口減少」では、岩手県は人口減少対策に重点をおき、21年度は「移住定住・関係人口拡大」、22年度は「出産・子育て支援」、23年度は「若者の地元志向の高まりを支援する「起業支援」等に注力してきた。22年の移住相談は過去最高となったが、地域一体としての発信力が課題である。
③「地域に人を呼び込む、市町村・企業も切磋琢磨」では、市町村・民間事例の紹介(西和賀町の若者向け住宅)、県内中小企業のDX推進、東京に本社置く企業との一括採用、北上の大規模アウトドア民間事業、企業版ふるさと納税(官民協働の施策推進)、キオクシア/トヨタ自動車東日本㈱岩手工場等のトピックス紹介がありました。
④「震災と地方創生、未来への希望、提言」では、大震災で課題は鮮明になった。コミュニティの維持が課題となっている。どう地域をつくっていくか、その過程、在り方は地方創生そのもの。県や市町村に「思い切った独自の政策をしては?」→身銭を切っても未来への投資になるはず、と現場記者目線から「岩手モデル」を官民総参加で目指そうと講義を結ばれました。
2.シンポジウム
下記の質問・コメント等がありパネラーの丁寧な回答と学長の解説等で活発な応答が行われました。
・今年4月に人口戦略会議が公表された「消滅可能性は県内は26市町村」とする報告に関する見解とその評価と対応ついて
・自治体による子ども誕生報奨金制度をどう評価するか?
・首都圏一極集中を国は是認しているのでは? もしそうなら、ある程度の集中を前提とした政策・施策の方が有効ではないか。関係人口策、二拠点居住策、分散納税等々
・一極集中の危険性とは何か?
・新規採用だけなではなく中途採用(Uターン者)の積極的受け入れ、就労支援策が有効と思われる。その対応策は?
・岩手の風潮、岩手は遅れている、都会がベター、という大人のアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)が若者に悪影響を与えているのではないか??
・若い人の本音を拾い上げる、若い人の共鳴する記事や報道の必要がある。
・県内の平均賃金、最低時間賃金等が低い。この改善策は?
最後に学長から、「地方創生の政策の重要性が強く感じられる内容でした。要点は地域の持続性の条件をきちんとつくることであり、具体的には、①人の再生産(ある程度の人口の確保)と②産業構造の進化と創造的転換、そして③エネルギーの再生可能エネルギーへの転換。この3つにより地域の強靭化をはかることが肝要。その時に私たちが豊かになったことで失った、またはかなぐり捨ててしまった“人間性”や“生き易さ”をもう一度しっかり再構築することが大事」との総括で、全15回の地域創生論は終了となりました。
今年度「地域創生論」の講師役をお引き受けいただきました皆様にあらためて御礼申し上げます。後期には公開授業「地域活性論」を予定(内容確定 ここから)しています。引き続き富士大学の地域貢献プログラムへのご理解とご協力をお願い申し上げます。
写真1)左から岡田学長、小野部長、稲垣次長 写真2 小野部長 話題提供 写真3 稲垣次長 話題提供
写真4 シンポジウム 質疑応答 写真5 シンポジウム 風景 写真6 シンポジウム 学長コメント