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第13回「地域創生論」は共同通信社盛岡支局長の半沢隆実氏を講師にお迎えして講義が行われました。

授業関係
 7月5日(木)、共同通信社盛岡支局長の半沢隆実氏を講師にお迎えし「地域創生論」第13回目の講義が行われました。半沢氏は福島県会津若松市の生まれの国際ジャーナリスト。共同通信社入社後、カイロ支局特派員、ロサンゼルス支局長、シアトル支局長、ロンドン支局長として欧米と中東を中心に世界の紛争現場で長く取材をされておられます。主な関心はパレスチナ情勢、イラク戦争、アフガニスタン戦争、米国の銃文化、欧州の移民問題、テロ問題など。『武装する米国市民』(集英社新書)などの著書があります。盛岡支局長としては2016年11月に岩手に来られました。今回は氏の国際ジャーナリストの豊富な取材経験から「ヨーロッパの元気な田舎町 情熱と郷土愛が生んだ地域創生2例」とのテーマで、「古書の聖地」であるイギリスのヘイ・オン・ワイという町、そして「美食の町」として有名なスペインのサン・セバスチャンについてお話をしていただきました。

 ヘイ・オン・ワイは人口1,500人ほどの小さな町。個性的な古本屋と古本市には全世界から年間50万人から100万人の本好きがこの町を訪れます。ヘイ・フェステバルには何とカーター元米国大統領はじめ世界のセレブも。古書を核にしたこの町の中心にいるのがリチャード・ブースという人物です。23歳のころ、美しい町の寂れかたに胸を痛め、若者を地元に引き付けるために古本屋の営業を思いつき町の古い消防署を古本屋に、また映画館を買収し25万冊を並べる「シネマ書店」を開設。現在のヘイ・オン・ワイが形成されていきます。「リチャード・ブースという偏屈者の情熱が古本の聖地を作った」と半沢氏は言います。

 もう一つはスペインのバスク地方にあるサン・セバスチャン。この町のキーマンはルイス・イリサール。マドリードの一流レストランやパリ、ロンドンで修業を積み、サン・セバスチャンに戻る。伝統的なバスク料理に、修行で得た「ヌーベル・キュイジーヌ」の手法を取り込み、新たな時代のバスク料理の世界を開拓。さらに業界のタブーを破り、自分の料理のレシピを公開する。「どの店もおいしいと評判になれば、世界から人が来るようになる」とのビジョンのもとに。

 一人の人間の郷土愛と情熱が新たな町をつくる。二つの事例の共通点として半沢氏は次の2点を指摘。一つは「一点で強い魅力を発信」し地方のハンデを克服。もう一つは「前例にとらわれない個人の思い入れと郷土愛、執念」が生んだ成功。世界的なレベルで地域創生を考える、興味深いお話でした。

 質疑の時間には、個人主義と集団主義、地域振興について個人と行政の関わり、古書管理の話題のほか、地域創生の枠を超えて、アメリカの銃社会や中東の紛争取材現場など、活発な意見交換がなされました。

次回7月12日は、東京大学名誉教授で東京海洋大学特任教授の木村学氏を講師にお迎えし、「地球物理学者は地域振興をこのように考える」というテーマで行われます。