学長 龍澤尚孝
令和7年6月1日をもちまして、富士大学学長に就任いたしました龍澤尚孝でございます。本学にとって、本年令和7年は創立60周年という大きな節目の年です。このような歴史的なタイミングで学長という大役をお預かりすることになり、身が引き締まる思いでいっぱいです。
私は令和5年5月末より理事長職も拝命いたしておりましたので、理事長、学長を兼任することとなり、経営、教学両面における責任を担うこととなります。改めまして、どうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、本学は、「教育第一主義」を掲げ、学生一人ひとりの可能性を信じ、そのポテンシャルを最大限に引き出す教育を追求し、未来を担う人材の育成に尽力したいと思っております。私は、若い世代が持つ無限のエネルギーと、学びの場が生む化学反応に、強い情熱を抱いています。大学とは、その可能性が目を覚ます場所であり、誰かと出会い、自分を見つめ直し、新しい世界へと踏み出すきっかけを得る場所です。学生が「学ぶ楽しさ」に目覚め、自ら考え、行動し、成長していく——その姿を支えるのが私たちの使命です。私は教育は国づくり、地域づくりの礎であり、未来を切り拓く力の源泉であると信じております。学生が大学で学んだことが現実社会と直結していると実感できるような、実践的な学びの場を、もっともっと増やしていきたいと思います。学生が育つには、人と人とのあたたかい関わりが必要です。学ぶことの楽しさ、仲間との対話、失敗してももう一度チャレンジできる空気――私は、そうした学びの“土壌”を、これからの富士大学の中で、もっと豊かに耕していきたいと思っています。
これからの時代に求められるのは、知識、技能だけでなく、変化に対応し続ける力、そして課題を乗り越える実践力です。また、これからの社会においては、変化を前向きに受け止め、自ら学び続け、成長し続ける力がますます求められます。本学では、「学ぶ楽しさ」を体感できる実践的な学びを重視し、PBL(課題解決型学習)や地域との連携を通じて、学生が主体的に知を深め、仲間と協働しながら現実社会と向き合う力を育み、教室の中にとどまらない「生きた学び」を提供してまいります。学生たちが、自らの学びを地域に、そして世界へとつなげていけるよう、私自身も全力で伴走していく覚悟です。地域のリアルな現場で、悩み、迷い、考え抜く。その中でしか育たない人間力や、仲間と力を合わせる経験、そして「社会って、こうやって成り立っているんだ」という実感。学生が地域の一員として関わることで、地域も学生も、ともに成長できる。それが、私が思い描く「協働の学び」です。
言うならば、本学が目指すところは、ただ単に地域の中にある大学ではなく、地域の未来を共に描く大学です。大学が地域の人々と協力しながら、新しい価値を生み出す拠点となり、学生がその中心で活躍していく——そんな未来を、私は本気で目指しています。私自身、まだ若輩者ではありますが、だからこそ、変化を恐れず、前向きに、情熱を持って走り続けていきたいと思っています。学びに年齢は関係ありません。学生も、教職員も、そして私自身も、学び続け、成長し続ける大学でありたいと強く願っています。学生、教職員、地域の皆様とともに「共に学び、共に成長する大学」を目指して、全力で取り組んでまいります。本学は、地域とともに歩む大学です。今後とも、地域の皆さま、関係各位、そしてすべてのステークホルダーの皆さまのお力添えをいただきながら、この富士大学を「未来を創るエンジン」にしていけるよう、力を尽くしてまいります。学生はもちろんのこと、教職員もまた、地域もまた、変化し、成長し続ける存在です。「皆が学び、育ち合える場」、そして「誰にとっても温かく、前向きな力を得られる場所」にしていきたいと心から願っています。私はこの大学に、「あたたかさ」と「前向きなエネルギー」が満ちていてほしいと思っています。失敗を恐れず挑戦できる環境、悩みを分かち合える仲間がいる環境、そして「ここに来てよかった」と心から思えるようなキャンパスを、全員でつくっていきたいと願っています。
今の日本、そしてこの地域も、人口減少や働き手不足、産業の変化、医療や福祉の課題など、さまざまな壁に直面しています。こうした「地域課題」こそが、学生にとって一番の学びの場とも言えます。私たちは「地域に根ざし、地域とともに発展する大学」として、地域社会との連携をさらに強化してまいります。地域の皆様との協働を大切にし、自治体や地元企業等との産学官連携をより一層推進してまいります。自治体、地元企業等との産学官連携を深化させることで、地域課題の解決に寄与し、地元の未来を支える人材を育成・輩出していく所存です。そして、本学が、地域の希望となる人材を輩出し続ける拠点となるよう努めてまいります。
また、進展し続けるグローバル社会の中では、国際的視野を持ち、多様な価値観と出会い、学び、共に歩む多文化理解と協働の力を備えた人材の育成が必要です。地域に根ざしながらも、世界に目を向け、広い視野を持ったグローカルな若者を育てていく、それも本学の使命です。本学のキャンパスが多様性に富み、世界と地域をつなぐ学びの拠点となるよう努めてまいります。
これまで、本学は地域経済の担い手となる数多くの人材を輩出してきた経済学部を軸に、地域社会との深いつながりの中で成長してきました。そして、地域経済やビジネス、会計、経営の分野で実践的な教育を展開し、多くの人材を世に送り出してきました。卒業生たちは、自治体、地元企業、教育機関など、さまざまな分野で活躍しており、「地域を支える人を育てる大学」として確固たる地位を築いてきました。今後も、経済学部は本学の中心として、地に足のついた教育を進化させてまいります。
そして、創立60周年を機に、富士大学は次のステージに向かいます。まず、令和9年度に「スポーツ健康科学部」を開設予定です。スポーツは、人の心と体を健やかにするだけでなく、地域の絆を深め、暮らしの質を高めていく大きな力があります。この学部では、スポーツを軸に、健康、教育、福祉、地域づくりまで広く横断的に学び、地域の現場で役立つ実践力を育んでいきます。健康づくりから地域活性まで、広い視野で社会と関わることのできる人材を育てていく構想です。スポーツの力で、地域を元気にする。それが私たちの目指す姿です。スポーツは単なる競技だけではなく、人の体、心、そして地域のつながりをつくる力を持っています。健康づくり、福祉、教育、地域活性化…さまざまな分野と密接につながっています。私たちはこの学部を通じて、スポーツと健康の視点から社会課題に取り組み、地域に貢献できる人材を育てていきます。
さらに、令和10年度には「デジタル創造学部」を新設予定です。デジタル技術は、今やあらゆる産業や生活の基盤になっています。AI、データサイエンス、プログラミング、メディアデザイン、DXなどを実践的に学び、デジタルの力で新しい価値を創り出す人材を育てていきます。これらデジタル技術を現実の課題解決につなげるためには、「使いこなす力」だけでなく「創り出す力」が必要です。今、社会のあらゆる場所で、デジタル化が急速に進んでいます。ただ、その一方で、「技術だけでは解決できない課題」も多く存在しています。それを「どう地域で生かすか」「どう人にやさしく届けるか」という視点を重視します。この学部では、技術を学ぶだけではなく、地域や企業と連携しながら実際のプロジェクトに取り組む中で、学生たちが「創造力」と「実装力」を身につけていきます。まさに、“創造”と“実装”がテーマです。未来の地域産業を動かす力を、ここから育てていきます。
この2つの新学部には、私たちの「地域とともに未来を創る」という強い想いが込められています。スポーツ・健康・デジタル——この3つのテーマは、どれも新たな価値を生み出す可能性を秘めており、これらを軸にした学びを通じて、地域に新しい産業を生み出していく。それこそが、これからの本学の目指すべき方向性です。
これからの大学に求められるのは、変化に対応するだけでなく、変化を生み出せる力です。学びを通じて、自ら未来を切り拓ける人材。そうした若者たちを一人でも多く育てることが、私の使命だと考えています。大学とは、「未来の社会」をつくる人材が育つ場所です。そしてそれは同時に、「今の社会をより良くしたい」と願う人たちが、学び直し、立ち戻ってこられる場所でもあるはずです。結びに、地域の皆さま、自治体、企業の皆さま、そして本学の卒業生の皆さま、富士大学は、皆さまと共にあり、皆さまと共に歩み、そして皆さまと共に未来を創ってまいります。どうか今後とも、変わらぬご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。