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新着情報

関上マーケティングゼミ『森林と暮らしを考える講演会』とシンポジウムに参加しました

授業関係
 2020年10月17日、花巻市文化会館にて講演とシンポジウム(主催:「森林と暮らしを考える花巻市民の会」)が開催され、関上マーケティングゼミ農業グループが参加しました。
 当日の第一部は「いまこそ森林環境都市を」と題する講演で、岡田秀二 富士大学学長が、森林をとりまく地球温暖化から身近な森林環境問題まで、市民をとりまく森林問題について具体的に話しました。
 第二部は森林とくらしを考える花巻市民の会の皆様とシンポジウム参加者、佐々木繁夫氏(大沢川山生産組合 組合長)、小原貞一氏(平良木里山会事務局)との話し合いが持たれ、関上マーケティングゼミ農業グループから高橋一樹、高橋圭の2名が参加しました。
 
 <農業ゼミの事前課題>
 花巻市の農林業が産業として成り立つのかマーケティングの手法を使用して考える場合のヒントを話し合いから得ること。生産森林組合の立場とは何か、林業事業に関わる課題などから見える花巻市の森林環境都市の未来像を考えることとしました。

 <まとめ>
 今回の講演では、森林は山主の私有財産としてとらえがちであるが、森林組合法に規定されている特殊な財産であるという点が報告された。その財産は「公共の福祉」に合致するように維持管理されなければならない。きわめて公共性、公益性の高い私有地であるという面があり、国の管理を受けるものとして森林は存在しているという説明はきわめて森林という資源に新鮮な面があることを気付かせてくれた。それゆえ、森林は政策的折り合いをつけながら、維持されていくべき資源であるとも説明が加えられた。
 さらに、今日人類が抱える危機は、地球温暖化、生物多様性など多数あるが、それら危機の延長上に今日のコロナウイルスの問題も絡んでおり、それらは森林を身近なものとして考えるきっかけとなり、それに市民が関わることで解決の方向性が描けるという説明がなされた。
 最終的には、森林経営システムにより、森林従事者の生活のための生業として利用できるし、森林を市民の生活環境のためにもできる総合的な資源である面から運営してくことが必要となってきているというものであった。
 第二部のシンポジウムでは、大沢川山生産森林組合の佐々木繁夫氏が組合長として 現在148人の組合員とともにいかに森林組合活動を運営していくべきか、特に組合会費の徴収方法と組合員の資格の問題の難しさを述べられました。
主な内容は以下の通りでした。大沢川山地区の数十年前は、屋根葺き替え時の藁確保や家畜のえさとしての草刈り場を国から払い下げを受けた山に、おもに杉を定植し、管理して40年ほど計画してきた。3年前にはそれらの間伐をし、それ以後下刈りや枝落としなどを隔年で行ってきているとのことであった。しかし、共同牧野として利用してきたこの森林は、年々藁葺き屋根の維持や牧草管理の必要もなくなり、牧野組合としての機能を止め、育林の方向で杉を植林し、自然保護と間伐などによる処分により収入を得て維持することに計画を立て直し今日に至っている。しかし現状、森林の持ち主が都市部への就労あるいはその他の理由により住所を移転し、行き先不明の会員も存在し会費未納が問題となってきた。これには組合員の居所調査などをしながら、会費納入と補助金などから組合の活動をしていることが報告された。
きわめて厳しい生産森林組合の現状と全国の森林管理に共通した課題が報告された。
 さらに、長年の間の林道崩落、陥没や風雨に会い、活動が機能せず、入山や搬出路の確保が難しく不適合になっている現状もあると報告された。
 組合が40年も経過すると、組合員の老齢化と後継者難で脱退の申し出もあるなど組織の維持が難しいとのことであった。
 二人目の小原貞一氏は「平良木里山会の活動概要を平成12年度から中間地域所得補償制度による平良木集落協定、平成26年度から多面的機能交付金制度による活動組織を形成し、主に集落の自然を生かした景観形成、四季を彩る平良木の郷づくり」をモットーに河川敷の草刈りや主要道路沿いの刈り払い、被覆木の伐採、花壇への植林管理、花木の道路沿いの荒れ地への植栽、林地刈り払いなどの活動を行っているということであった。
※シンポジウム参加者からは、
森林をいかに管理運営するのが良いのか、具体的な質問や運営方法などが学長やシンポジストへ投げかけられた。
※講演会やシンポジウムに参加した者として、
今後自分自身はどのように大学のマーケティングゼミで学ぶべきか深く考えさせられた。特に、今日の少子高齢社会の日本では、林業の継続には若者が厳しい職場環境の中では活躍できる場であり、日本の林業振興の担い手として活躍できる場ではないかと深く考えさせられた。今後は林業の付加価値を高めるためのマーケティング手法を使い、この分野で活かせるマーケティングを考案していきたいという希望が湧いてくる講演会とシンポジウムであった。

参加学生の感想は以下の通り。
「特殊な財産である森林が、機能として社会不安・環境問題・地方創生など様々な今日的問題に対してどのように機能するのか、森林の可能性について改めて考えるきっかけになった。
後半のシンポジウムは、花巻にフォーカスして大沢川山生産森林組合と平良木里山会の活動概要、現状の課題や今後の活動に対して質疑応答がなされた。森林事業の後継者不足は顕著であり、我々若い世代が森林事業の抱える問題とその必要性を考え・行動していくことが重要であると感じた。」


シンポジウムで講演する岡田秀二学長