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日本最先進・木質バイオマス小規模熱電併給設備(チップガス化コジェネ+チップボイラー併設)フィールドワーク報告【遠藤ゼミ】

授業関係
2021年9月5日、遠藤ゼミ学生2名が花巻市石鳥谷町「ゆうゆうの里」(介護老人保健施設)にFWしました。この施設に紫波グリーンエネルギー㈱(山口勝洋社長)により、ESCO事業*1とFIT*2事業の組み合わせによる「木質チップのガス化コジェネ(電気40kw、熱100kw)とチップボイラー(熱200kw)」が導入されました。建設の最終段階*3をFWしました。

該社は2014年から紫波町のオガールエリアでエネルギーステーションを運用し、木質バイオマスボイラーによる地域熱供給事業を行っており、今年度から、この「ゆうゆうの里」と紫波町の「百寿の里」(特別養護老人ホーム)の2カ所で「木質バイオマス熱電併給事業(設備構成は全く同じ)」を開始しています。本学が取り組んできている花巻市内ということで、5日にまずは「ゆうゆうの里」の方をFWさせて貰いました。

現地到着後、山口社長から事業紹介のレクチャーを受けました。紫波町は2000年6月に「新世紀未来宣言」、2001年6月には「循環型まちづくり条例」を制定、以来これまで営々と「循環型まちづくり」に取り組んでいますが、山口社長と紫波町の連携は2010年に遡ります。該社は2010年に同町のラ・フランス温泉館で省エネの廃温水熱回収事業を担当、その後、オガールのエネルギーステーション事業を、そしてこの度この2カ所での木質バイオマス熱電併給事業を開始します。該社の企業理念や事業戦略の説明を受けました。地域に寄りそう、その志の高さには感銘を受けました。紫波町での地道な努力の継続が今回の熱電併給事業の実現につながりました。

日本国内で木質バイオマス熱電併給設備が安定稼働している実績はまだありません。今回の該社のシステム構成は、ガス化発電用チップ製造と性状管理に特段の留意が払われています。設備の見学ではその説明を受けました。(写真1~写真7)。それぞれの解説文を参照願います。)このガス化発電用チップを確保できるのは該社と紫波町(農林公社)の長年の付き合いがあればこそ。

紫波町は地域経済を回すために町内資源の活用、地元事業者による工事体制、PFI*4方式による公民連携等に長けていますが、今回も地元業者、地元金融機関(信用金庫)等との連携を工夫しています。

遠藤ゼミでは、この木質バイオマス熱電併給事業の経緯およびその動向(運転実績、パフォーマンス等)は研究調査テーマとしていきます。

山口社長からは、富士大学がコーディネーター役となって進めている「花巻市および周辺地域内エコシステムモデル構築事業」との共同・共創を探っていきたいとのお話しもいただきました。日本で最先進最先導設備の建設最終段階の見学はエキサイティングでした。

学生の感想は、「設備の視察と導入までの流れを説明して頂き大変貴重な経験をさせてもらいました。木質ガス化炉ということでチップからガスも作れるのだと初めて知り驚きました。また設備の立派さと、その金額にも驚きました。今後もこのような取り組みが増え、互いに情報を共有することにより更に木質バイオマスの利用が進むことで、脱炭素社会が近づくのだと思いました。」、「今後、このような設備がこの地域にたくさん設置出来れば地域活性化が進み、より豊かな生活になると感じました。そのためには、共有が必要になると思うので、今後のFIT事業に注目したいと思います。今回のフィールドワークは、非常に勉強になりました。」でした。

*1)ESCO:Energy Service Company の略。エネルギー会社(この場合は紫波グリ―ンエネルギー㈱が設備保有と運転を行ない)が熱と電気を販売する方式。
*2)FIT:再生可能エネルギー固定価格買取制度のこと。電気はこの制度で外販。
*3)チップボイラーは昨年度に工事完了
*4)PFI:Private Financial Initiativeの略。公共事業を実施するための手法の一つ。 民間の資金と経営能力・技術力(ノウハウ)を活用する。 


チップ受け入れ口と垂直コンベア(右端
写真1 チップ受け入れ口と垂直コンベア(右端)

垂直コンベア (木質チップ用では珍しい
写真2 垂直コンベア (木質チップ用では珍しい)


写真3 チップ連続式乾燥機(温風乾燥。ガス化発電用チップ用)


写真4 木質ガス化熱電併給ユニット(ガス化炉+発電機)


写真5 200kwチップボイラー
(ガス化ユニットの熱とこのボイラーで熱需要を賄う)


写真6 左側:ゆうゆうの里本館
正面奥:木質ガス化熱電併給設備棟


写真7 山口社長とゼミ生(多田さん、佐々木さん)
奥側の丘の上の建物が「ゆうゆうの里」