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第9回「地域創生論」 『夢しか実現するものはない』が行われました

授業関係
6月9日の講義は、岩手県葛巻町長の鈴木重男氏を講師として開講されました。鈴木氏は、若い時から役場勤務を通じてクリーンエネルギーや酪農、ワインづくり事業に係り、現在は町長として15年目を迎えて、「ひと・地域・資源を活かした 一歩先ゆくまちづくり」に取り組んできた経緯について話されました。講義概要は、およそ以下の通りでした。

 テーマの「夢しか実現するものはない」とは、夢に描いたことがある日突然に実現するというものではなく、少しづつ、諦めずに日々努力を重ねることで実現する、との考えからきている。これまで医療やインフラ整備に力を入れてきたが、ある程度約束してきたものができつつある。
 ワインについて:2代目の町長のころから山ブドウを主原料としたワイン作りに取り組んできたが、始めはだれからも理解されなかった。しかし、その時に理解されなくても、決断をしなければならないのが町長の役割であり、今は世界一の葛巻ワインを目指している。
 クリーンエネルギーについて:平成11年に取り組みをスタートさせ、今年は風力発電による電力自給率は360%(国の目標水準は30%。葛巻では町内年間電力総消費量4,186万kWの3.6倍が風力で発電されている)となっている。葛巻町は、その面積の86%を森林が占める林業のまちでもある。山林を活用し基幹産業の酪農・林業の充実に注力(「くすまき型」新酪農構想⇒100頭規模経営。6次産業化農畜産物加工)しており、エネルギーでは畜産バイオガス発電にも取り組む“循環型酪農経営”を目指している。
 少子高齢化について:葛巻町も若い人が少なくなり消滅都市のリスクを抱えているので、子育て、医療と教育面での保護者の負担軽減支援や、人口減少対策事業を実施している。
 酪農について:明治25年の乳牛導入に始まり、先人たちの創意工夫と苦労が脈々と受け継がれて130周年を迎えている。葛巻は年間平均気温8.8度で冷涼な気候に恵まれ、牛数、牛乳生産量でも東北一の酪農の町である。チーズやブランデー造りにも挑戦して、もうかるものだけをやるのではなく、技術者を養成して「夢を追う」ことも大事だと考えている。
 情報通信基盤整備:「情報格差を無くす」という公約実現のために、町内全域に総延長450kmの光ファイバー網を巡らせた。当時はあまり理解が得られなかったが、緊急速報も議会放送も町内全域でみられるのは葛巻町だけであり、今は評価されている。

講義の終盤には、町の6次産業化や「くずまき鍋」の紹介があり、本学から葛巻町の職員に採用された3名の卒業生から後輩へのメッセージも紹介されました。

質疑応答:『限界集落についてどのような対応を考えられているのか』との質問に対して、鈴木町長は、『地域に住み続けたいと望む人たちがいる限り、地域住宅の整備や交通の便の確保等町としての支援を行っていく。学校の統廃合は、町からは言わない。』と回答されました。そして最後に『「まちづくりはひとづくり」で、人づくりが一番大事。十歩先、ニ十歩先をゆくことは難しいが、一歩先をゆく町づくりをしていきたい!』と力強いメッセージで講義を締められたのが印象的でした。