文字サイズ
※翻訳が不十分な場合もございます。
ご了承下さい。

新着情報

第 15回「地域創生論」『地域創生の実現に向けて~第Ⅱ期地方創生政策の課題を探る ~』と題してシンポジウムが開催されました

授業関係
 最終回となる 7月21日の授業は、岩手県政策企画部長の小野 博氏、岩手日報社編集局報道部次長の川端章子をパネラーとしてお招きし、岡田秀二学長をコーディネーター役とするシンポジウム形式で行われました。
 2014年 (平成26年)9月に、人口減少や雇用不安に苦しむ地方の活性化を目指して、内閣総理大臣を本部長とした「まち・ひと・しごと創生本部」が設置されました。第 I期 の 5年を過ぎて第Ⅱ期入りした今の時点で、これまでの政策を踏まえて課題を見出し、今後どのようにして地域の持続に向き合って行かねばならないのかについて、二人のパネラーからご意見をうかがいました。

1. 話題提供及び報告:
(1)はじめに小野氏からは、「長期的な岩手県の将来を展望し、県民みんなで目指す将来像 とその実現に向けて取り組む政策の基本方針」である「いわて県民計画 (2019~ 2028)」と「ふるさと振興総合戦略」について概要説明がありました。
① 政策分野ごとに「いわて幸福関連指標」を設定し、目標値もバックキヤスティング(未来を起点として、そこから逆算して今何をすべきかを考える方法)の視点で分かりやすいように設定している。
②「ふるさと振興総合戦略」は、人口減少対策に関係する分野を推進するための計画であり、自然増減、社会増減を示す人口動態を踏まえて、東京圏の若い人々を呼び込む取り組みを行っている。今度の重点テーマは、①人口減少社会への対応 ②デジタル化への推進 ③グリーン社会の実現としている。結婚新生活支援事業、岩手の仕事・就職情報サイトやラインの開設、デジタル化の推進により、個性豊かで持続可能な地域社会の実現を図っていく。デジタル田園都市国家構想や地域の強みで地域経済と環境に好循環をもたらす「グリーン社会」の実現を目指してオール岩手で推進する。

(2) 次に川端氏が、「地域創生の実現に向けて」と題してジヤーナリストの視点からみた地方創生政策、また地域創生への現状と課題について、岩手日報で扱った報道記事を示しながら話されました。
① 2015年頃より「地方(地域)創生」という言葉が新聞紙上でも頻繁に使われるようになったが、人口減少や地域の医療機関の減少に歯止めがかからず安心して子育てができる環境になく、地方創生が進んでいないのが実状。また、東日本大震災被災地のインフラ復興状況・人口変化データと震災から11年の遺族アンケートを踏まえると、地域の再構築がコロナ禍に阻まれているのが報道の実態である。
②まちコミュニ ティの課題:震災による地縁・血縁・職縁の分断、人口流出、高齢化によりコミュニティー維持の課題が山積している。被災地が抱えていた人口減、高齢化の問題は、震災後に加速したが、それは被災の有無に拘わらず全国各地に共通する課題である。⇒東日本大震災被災地がどのように地域をつくっていくか、その過程、在り方等は先行指標であり、まさに「地方創生」実践そのものである。
③住民が認知症の方を地域で支える団体を結成したり、オートキャンプ場の新設、移住者や地域おこし協力隊の発信等新たな動きもある。復興まちづくりの挑戦、ネットから市政に参加する仕組み、アートでまち活性化等の取組みや、花巻市のまちづくりに富士大学の学生も関心を持ってフィールドワークに参加した記事、などが紹介された。
④コミュニティの維持こそが課題で、「自給力」と「地域力」、基盤・人づくり、ゆるいつながりによる持続可能なコミュニティの維持を図るべき。

2. ディスカッション
 お二人のお話の中にもあったように、人と人のつながり支え合いが弱くなったが、その分かえってコミュニティの力が大切になってくる(司会)。
コミュニティのつながりは、市町村単位が基本で、県はその後押しをする立場。専門性広域性が大切なので、一市町村の枠組みを超えた役割を担っていく(小野氏)。

最後に質疑の時間をとり、フロアーとパネリスト、コーディネーターとの間で、地域活性化の取組み、人材育成でDXをどう利用しているか、人口減少対策等について活発な意見交換が行われました。

今回で今年度の「地域創生論」は終了となりましたが、お忙しい中講師役をお引き受けいただきました皆様にあらためて御礼申し上げます。後期には公開講座「地域活性論」を予定していますので、引き続き富士大学の地域貢献プログラムへのご理解とご協力をお願い申し上げます。