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新着情報

第7回「地域創生論」 『夢しか実現するものはない』が行われました。

授業関係
5月23日は岩手県葛巻町長の鈴木重男氏を講師として開講されました。鈴木氏は、若い時に酪農、ワインづくり、クリーンエネルギー事業の経営に役場職員として携わり、その経験で得た知識・技能・経営感覚を活かし、「ひと・地域・資源を活かした一歩先ゆくまちづくり」に17年間町長として組んでいます。地域創生とは初めて創り出すこと、生み出すことである。地元の資源を活かした“くずまきモデル”の事例紹介がありました。
・酪農について:明治25年に始まった。年間平均気温8.8度の冷涼な気候に適した産業として先ずはこれに取組んだ。採草地、牧野を切り開き、その創意工夫と苦労が脈々と受け継がれ今年で131年となる。今では牛数、牛乳生産量でも東北有数の酪農の町となった。儲かるものだけをやるのではなく「くすまき型新酪農構想⇒100頭規模経営」や「6次産業化農畜産物加工」などでの「人づくり」と「夢を追う」ことの両立が大事と考えている。
・ ワインについて:2代目の町長が山ブドウを主原料としたワイン作りに取り組んだが始めは理解されなかった。職員の時の研修で北海道池田町(十勝ワイン)での学びで開眼した事の詳細披瀝がありました。ワインは地道な努力で町の特産物になりました。葛巻の特長である「内発型産業づくり・まちづくり」の苦労や工夫の紹介でした。
・クリーンエネルギーについて:平成11年にスタート。今では風力発電による電力自給率は360%。葛巻町は面積の86%を森林が占める林業のまちでもある。山林を活用した基幹産業の酪農・林業の充実に注力してきた延長上に実現したのが風力発電。道路をつくって牧場をつくったら山頂には風が吹いていた。この道路を利用して風車を建てた。牧場の牛の頭数が増え糞尿処理に困った。でこの糞尿を利用し畜産バイオガス発電に取り組む“循環型酪農経営”を目指すことになった。「山ぶどう」も「山頂の風」も「糞尿」も一見は「負のもの」であるが実は宝だった。負のものの活用を実現したのが”くずまき型“である。
・少子高齢化対応:子育て、医療と教育面で保護者の負担軽減支援、人口減少対策事業などを実施している。バイオリン教室/保育料完全無料/在宅育児支援金/給食費完全無料/小中高生支援/葛巻高校生向け公設民営学習塾無料等。高校生まで医療費無料化、医療従事者養成、移住定住住宅整備等。(多くの学生が感嘆しました。授業レスポンスカードより)
・情報通信基盤整備:町内に総延長450km光ファイバー網を町長1期目に実現。緊急情報や議会生中継等を町内全域に配信。住民は必要な情報やデータを即入手出来できる仕組みなっている。これで住民の暮らしの安全と安心につなげている。
・葛巻高校について(山村留学制度)
現在は町外からの入学者の方が多数。個人負担は月2万円(授業料+寮費)。昨年度は卒業生は55名(進学48名、就職7名)。葛巻高校は今や進学校。卒業生は町の財産。卒業生の葛巻への理解・関心が将来の20年後のまちづくりにつながるとの思いである。
・現在の取組みの「くずまき鍋」の紹介があり、講義のラストは本学から葛巻町の職員に採用された3名の卒業生からの後輩へのメッセージの紹介がありました。
質疑応答:「保育料の完全無料化等手厚い施策が実現出来たのは何故か」に対し「子供は町の財産、町民全体で育てるという理解と認識を議会から得た。国の地方創生政策での子育て支援策をいち早く利用して実現している」と回答でした。「人口減少を見据えれば地場産業に選択と集中が必要ではないか」に対しては、「地方で子育てしたい、一次産業で働きたい、そういう人達が増えてきている。そういう人に来て貰える町を目指している。現状の地場産業規模の保持や町の文化伝統を伝える。それを理解して貰える人に来て貰えればよい。人口4千人の町をキープすることを目指している」との回答でした。

写真1 左:岡田学長  右:鈴木町長



写真2 授業風景                      写真3 授業風景                    写真4 授業風景